シミュレータとテストパイロット

ブルーインパルス編隊長および飛鳥のチーフパイロットを務めた原田実氏の講演記録。
http://homepage1.nifty.com/koyama_s/KASM_volunteer/ohanasi/003/harada.html

ーーー以下引用
こういったシミュレータ試験は、評価パイロットと飛行機の設計者とシミュレータのエンジニアがチームを組んで行う。
この場合、パイロットは誰でもよいかというと、そういうわけにはいかない。
まずその飛行機がどのような運用をされるかということをしっかりと知っていなければならない。 それから、いろいろな飛行機の操縦を経験していなければならない。 正確なデータを取るために、飛行機を設計者から指示された通りに正確に飛ばせなければならない。 そして理詰めに物事を見られる人でなければならない。 どこかおかしいことがあると、何で操縦が難しいのか、どこが拙いのかを判断できなければならない。 設計技術者とは技術用語で会話できる知識が要求される。
またシミュレータのことを十分に知っていなければならない。
更にチームを組める人でなければならない。

評価パイロットは、まだ飛んでいない飛行機を評価するので、間違った評価をすると、設計の進捗に影響を与える。 試験は極めて慎重に、真剣にならざるを得ない。 実際の飛行より緊張するものである。
しかしシミュレータに入力されているデータは推定値である。
またシミュレータの能力にも限界がある。
したがって、シミュレータ試験の結果が全て正しいとは、設計者もパイロットも確信を持っているわけではない。
設計者もパイロットも正直のところ実際に飛ぶまでは、少なからずの不安がある。

そうした不安を抱えながら、やがて初飛行を迎えるわけである。
設計者は自分たちの計算結果は正しかっただろうか、推定値は正しかっただろうか、パイロットは限られた条件の中でやってきた評価は正しかっただろうかと、一抹の不安を抱きながら、初飛行に臨むわけである。

しかしSTOL実験機の場合も、T-4の場合も、実際に飛んだところ、シミュレータ試験の結果と殆ど変わらなかった。 設計者やシミュレータ技術者の技術レベルは非常に高かったわけである。
STOL実験機の初飛行で飛び上がった直後、私が無線で地上に言った言葉は「シミュレータにそっくりだよ」という言葉であった。
これは設計者やシミュレータ・エンジニアを早く安心させてやろうと思っていった言葉である。
またシミュレータ試験の精度の高さに敬意を払って言った言葉である。

ーーーー引用終わり。
し・・しぶい。やっぱり作り続けないとこういう過去のいい経験も流れていってしまうんだよな〜とか思った。