月は、サイパンではなく、江ノ島。

タイトルが意味不明だと思いますが、内容はこのまえの「なぞなぞ宇宙講座」での発言の訂正です。今日、野田司令から届いたメールが面白かったので転載します。
・・・とその前に、そのときの流れ、など。
NASAや中国が月の有人探査再開するっていってますね〜そんで火星ですかね〜いややっぱ小惑星でしょ〜みたいな流れのなかで、八谷が野田さんへ、
「いや、月や火星より小惑星のほうが目的地として適切なのはわかるんですけど、まあとりあえずの目的地というか練習のために月に行く、ってのはないんですか?例えばハワイに行くのが大変だからとりあえず今年はサイパンにしとく?みたいな」という質問がありましてそれをいろいろ話していたのでした。

では、以下は野田さんからのメールです。
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八谷さん、藤谷さん、斎藤さん、佐藤さん。
昨日はお疲れさまでした。

あの後、つらつら考えたのですが、やはり月には魅力を感じません。
昨夜は「火星探査の前としての月探査」を「ハワイが目標だが、その前にサイパン」と言ってましたが、例が不適切です。

地球と火星との距離は、時期によって変わるのですが、およそ5600万kmから3億8000万kmです。
これに対して月は38万km、つまり147〜1000倍も離れて居ます。
ハワイは、東京から6000kmの距離ですから、月に相当するのは、6〜41km程度です。
最も月と火星の差が小さい時でも、東京から大島の109kmの半分くらい、つまり江ノ島くらいでしょうか?

だから、「ハワイに行く前にサイパン」ではありません。思いっきりおまけして、「ハワイに行く前に江ノ島」です。

最終目的地が「ハワイ」なのに「江ノ島」に行ってお茶を濁すだけ。

「月まで行ったのだから、少しは火星に近づいた」と思うのは大間違いです。
江ノ島に着いたから、次はハワイに」とはならないでしょう。江ノ島からハワイに船も飛行機も出て居ませんから、一度東京に戻らないと駄目な訳です。冗談ではなく、「月に行ったら、月から火星に」どころか、一度地球に戻って出直しになるでしょう。

ーー引用ここまでー
まあ、サイパンと言うよりは大島くらいかな〜とは思っていたのですが、距離的には江ノ島だったとは・・・船でも飛行機でもなく、電車でいくとこじゃないですか。
それにしても何気ないトークにもかっちり検証して修正を入れてくる(笑)野田さんは偉い。その気持ちも少しわかります。本気で火星や小惑星に行きたかったら、その準備や算段をしっかりすべきで、今は月のことなんぞにかまっている場合ではない、予算も時間が限られているんだから「よそがやるから」ではなく、自分がやるべきことをやれ、というのが野田さんの言いたいことなのでしょう。
例えば、交通手段ひとつとっても、既存の手法そのものではとうてい行けない場所にあるんですよね、火星や小惑星は。
例)地球から火星までは約6ヶ月くらいかかる。で、その間宇宙で飛び交っている放射線を防ぐ手だてはいまだなく(ISSはまだ地球に近いので、同様に考えられない)、ヘタすると火星につくころには人間は放射線の浴びすぎで死んでしまう・・・
でも、それは理解しつつあえてああいう風に言った自分の本心を書くとすると、まだNASAや中国は「ひとりで江ノ島に行ってみよう」と思うだけかなりましで、日本は実はいまだ自力で家の外にすら出たことないひきこもり状況だとも思うんですよね。