空飛びタマシイ

長時間飛んだ後の気持ちを言葉にするのはとても難しい。
例えて言うと・・・というので思い当たるいい例えがみあたらないから。

今日はトライク訓練3日目。(書いてなかったけど、11/6にもトライクの訓練した。)
訓練は教官同乗で滑走路脇の空域(稲刈り後の田圃)を飛ぶのだけど、田圃の畦や、細い道路の筋をなぞるように、一定高度でまっすぐ飛ぶのが1本目の練習メニュー。今日は横風が強かったので、偏流とりつつ飛ばす必要があった。
2本目は滑走路上空20mほどでのローパス。ローパスは一定高度を保つための練習で、これが出来ないと着陸が不安定になるのです。今日はローパスを5本程度やったところで、体力と集中力が欠けてきたので着陸。2本で合計で1時間ほど飛んでました。
僕はPCのフライトシミュレータも好きなんですが、でもやっぱりシミュレータで飛ぶのと実際に飛ぶのは大きく違う感じがする。ブドウジュースとワインくらい(byクロパンダさん)違う感じ。

実機で飛ぶ場合、いつも心の片隅には墜落したら間違いなく大けがする、ってのがある。だから、教官の指示で飛んでいても「あ、やばい」と自分が判断したら・・・例えば風が巻いている気配や沈下の気配を感じたら、すぐ高度をとって安定させようとするし、また教官もそういう自律的な判断を求めていると思う。
あと風の影響。M-02やハンググライダー、今練習しているトライクなんかは軽い分、風の影響を受けやすい。だからまっすぐ飛ばすだけでもかなり体力を使ってしまう。そういう意味で、もっと大型の機体になるとシミュレータとの違いは少なくなるんじゃないかとは思うのだけど。

このまえ福岡に行った帰り、羽田空港の書店で旅客機パイロットの書いた本
「高度3万フィート、思うがまま―現役パイロットがいざなう、操縦席の魅力」
を買ったのだけど

高度3万フィート、思うがまま――現役パイロットがいざなう、操縦席の魅力

高度3万フィート、思うがまま――現役パイロットがいざなう、操縦席の魅力

このなかに「パイロットにとって役に立たない3つのこと」
ってのがあって、それは
(1)頭の上の高度
(2)自分の後ろにある滑走路
(3)1秒前のできごと
なんだそうだ。特に(3)なんだけど、飛行中の操縦者が最もやってはいけないことは「反省」らしい。
つまり、飛行中は反省している間にも、事態や機体の姿勢はどんどん変化してしまうので「現在」と「未来」に集中して、過去のことは考えないこと、が重要なのだそうです。反省するのは地上に降りてから。
でも意外に「過去を考えない」ってのは難しくて、でも多くの人は地上にいるとつい過去を考えちゃったりもするから、そういう思考の矯正のために「空を飛ぶ」ってのはアリかもしれんなぁ、と疲労した頭と身体で電車に乗りながら考えたのでした。
※ついでに、なんとなく鳥の時間感覚は人間と相当違うんじゃないか、とかも思った。記憶よりも反射のためにリソースを多く取ってあるんじゃないか、とか。


あ、タイトルは五十嵐大介氏の「そらトびタマシイ」から。

そらトびタマシイ (KCデラックス アフタヌーン)

そらトびタマシイ (KCデラックス アフタヌーン)

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